西野そらの日々のこと 

「書く」ことを暮らしのなかの一つに。日々の些事をどう受け止め、考えたのか。忘れないように。

蝉と雨と浴衣

 目覚まし時計のアラーム音をとめたところで、蝉が鳴いた。

 「ミーンミーン」だったか「ジィ〜」だったか失念してしまったが、ことし初めての蝉のこえ。

 ああ、夏がきた。

 されど。夏がきたと思った朝は、まだ梅雨は明けていなかった。梅雨は明けていないけれど、雨が少なく空梅雨をおもわせる暑さが続くさなかであった。

 というのに。空梅雨の梅雨明けが通達されるや、雨が降ったり雲が低く垂れ込める日が続いたり。わたしが経験した梅雨や梅雨明けとはちがってきている。

 

 ヒトは自然に翻弄されがちだけれど、鳴きはじめる時期のタイミングに迷いはないのかね、蝉たちよ。いろんなことで迷いがちなわたしは、蝉と通じ合えるなら迷わぬ秘訣を訊いてみたいぐらいだ。しかし蝉と通じ合わずも、もっと身近に迷わぬヒトがいた。

 

 花火大会のあった数日前のことだ。

 花火大会といえば浴衣。いつからこういうことになったのか知らねど、とにかく花火大会には浴衣がつきものらしい。何日もまえから土曜日は浴衣で行くからね。高2の次女から念を押されていたのだった。

「ついに、浴衣で花火大会に行けるね」 

 次女より6歳上の長女が初めて浴衣をきて花火大会に行ったのは7年前の高校1年生だった。以来何度も浴衣姿の長女を見送るだけだった次女。ようやく次女にもその時がきたのだ。これが念を押す理由である。

 ところが。

 土曜日は朝から雲行きが怪しかった。怪しいだけでなく午後にはポツポツときた。

 花火は午後7時過ぎから打ち上げられるが、その時間帯は天気予報ではかなりの降水量が予想されている。

 着付けをしながらもわたしは気が気でない。

「雨でも浴衣で行くの?」

「そりゃ、浴衣でしょ」

「そうとう降るみたいよ。Kちゃんも浴衣で来るって?」

「Kも浴衣で来るって」

「でもさ、こんなに降ってるのに、そもそも花火大会あるの?」

「あるって。Kはもう家出たって」

 ラインやら、ネットおかげで情報を得るのが早いこと早いこと。

 土砂降りのなかで花火なんか見えるのだろうか?大雨で浴衣を着る理由は?

 なにひとつ答えを見いだせないまま、なんの迷いもない浴衣姿の次女を見送った。

 車で最寄りの駅まで送った夫が言う。

「あの浴衣、ダメにしてくるね」

 

 大きなお金が動いているのだから、開催者側も簡単には中止とできないのはわかる。しかし行くか否か、浴衣を着るか否かはそれぞれが判断すること。どうやらわたしの判断はそうとうズレているらしい。 

 茶色に染まった浴衣の裾を洗うわたしに、

「偶然会った部活の後輩たちもみんな浴衣だったし、周りも浴衣の人ばっかりだったよ」

 すまなそうではあるけれど、「花火大会には浴衣」を確信した次女が強気で言った。

 そう言われてもね。わたしならそうしない。                  

 あらやだ。わたしったら、少しも迷っていやしないじゃない。

sosososora.hatenablog.com

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妹のところで撮りました。

みかんの木を撮りたかったのに

違う木を撮ってたみたいです。

西野 そら