西野そらの日々のこと 

「書く」ことを暮らしのなかの一つに。日々の些事をどう受け止め、考えたのか。忘れないように。

プチメール

 「疲れるので、帰って来るまでには機嫌を直してください」

 気まずいまま夫を送り出した日、わたしはこんなメールを夫に送る。 

 喧嘩に被る笠はなしとはよく言ったもので、その日も朝の穏やかな雰囲気が一変した

 のは、玄関までのたった数歩でのことだった。

「今日は会食があるから(遅くなるということ)」

 出がけの報告に、なにか言たくなった。

「会食って便利な言葉だよね」

 わたしとしては笑いにつなげる、いわばツッコミをいれたつもりだった。が、滑った。滑っただけでなく夫はたちまち不機嫌になり、無言で玄関を出て行ったのだ。

 考えてみれば会食が続き、夫も申し訳ないという気持ちがはたらき、伝えづらかったのかもしれない。わたしもチクッと刺してから笑いにつなげようという気がなかったわけでもない。

 こういう夫婦の微妙な感情の食い違いはよくあることで、思いがけない火ダネになったりもする。

 

 夫婦げんかというものは、体力と気力がないとできない。言い争うにしても、存在を無視する精神的闘いにしても、相当なエネルギーを消耗する。エネルギーの消費量と互いの関係性の改善が比例するのなら消費のしがいもあるが、大抵の場合、エネルギーの無駄遣いで終わる。

 そんなことに大切なエネルギーを使うなんてもったいない。四十代後半あたりから、夫とけんかをするのが、一気に面倒になった。 

 

 先輩の佳き教えの一つに、相手が変わるのを期待せず、自分が変わればよいというのがある。

 なるほど、と思うが簡単ではない。しかし、一方が変わらずとも。諦めるられる時期がおとずれた。この諦めは受け入れるとも言えるだろうか。

 あのひともあのひとだけど、わたしもわたし。まぁ、しょうがない。

 共に歳を重ねてゆくことで、自ずとお互いさまと思えるようになるのかもしれない。

 

「疲れるので、帰って来るまでには機嫌を直してください」

 夫にメールを書きながら、自らにも言い聞かせている。

 こうして夜、何事もなかったように夫は帰ってくる。わたしも涼しい顔をで夫を迎える。

 

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日曜日、すれ違った犬の足跡。

犬より、足跡に惹かれて撮りました。

西野 そら

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