西野そらの日々のこと 

「書く」ことを暮らしのなかの一つに。日々の些事をどう受け止め、考えたのか。忘れないように。

冷凍しないわたし

 その日は茄子、蕪、人参、だった。

 いつもゆく八百屋の自家製糠床に漬かっている野菜の話だ。

 糠床はクリーム色をしたプラスチック製の漬物容器におさまり、店先の簡易レジの前に置いてある。つまりレジに並ぶや糠味噌をまとった野菜たちが、目の端にはいる位置なのだ。

 しかし、ときにはわたしがまじまじと糠床を覗きこむこともある。数日前まじまじとやったときには赤蕪とセロリが漬かっていた。

 赤蕪ねぇ。この冬うちの糠床を陣取ったのは人参、大根、蕪。代わり映えしない顔ぶれが続くとどうしても飽きる。

 旬の野菜、目新しい野菜は漬かっていないか。野菜のプロがつくる糠床からヒントを見つけられると見込んで、八百屋でわたしは目を遊ばせるのだ。

 昨年末のこと。

 宅配食材でピーマンが届いた。冷蔵庫の野菜室にもまだ数個残っている。だというのに野菜室の有り様を忘れ、八百屋でまた一袋を購入し、冷蔵庫の前でうなだれたのだった。

 さてどうしよう。ピーマン料理をあれこれ思い浮かべる。ナムル、炒め物、肉詰め。そうだ、ぬか漬けにしてみようか。そんなわけで、ピーマンを半分に切ってヘタと種を取る。水気を拭いて塩をまぶしつけ、糠床に入れてみた。初ピーマンのぬか漬け。

 

 「糠床の冬眠」

 以前ここで、冬は糠床を冷凍して休ませようか。ということを書いた。

 当時は、なにも漬かっていない糠床の手入れをする自信がなかった。それで冬眠という策を見つけ出したのだ。

 ところが。

 普段からぬか床の容器の置き場所は冷蔵庫。冬場は4、5日(実を言えば一週間かき混ぜなかったときもある)かき混ぜなくても悪くならず、宅配食材で届く野菜を漬けたり、漬けなかったりしているうちに、冷凍する間もなく気がつけば三月になった。

 少しぐらい菌の力が弱ったとしても、数日手入れをすれば菌は力を取り戻してゆく。そんな菌の力を信じようともせずに、これまでのわたしは自らの怠け心を捨てたいがために糠床も捨ててきたのだな。

いまはね、糠床の力にそうとう恐れ入っていますけど。

 

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オレンジはパプリカです。

西野 そら