西野そらの日々の事ごと

「書く」ことを暮らしのなかの一つに。日々の些事をどう受け止め、考えたのか。忘れないように。

エレベーター ② 

 前回に続き、エレベーターのはなし。

 

 出先で数人の知人と定員ギリギリと思われるほど混み合うエレベーターに乗り込んだときのこと。扉が閉まるや、後ろからヒソヒソと話す声がする。一方ではこんな会話がはじまった。

「そのデザインの服、子どもにせがまれてるんだけど、トイレのときはどうするんですか」

 この会話の始まりとともに、後ろのヒソヒソ声は止まり、にわかにエレベーター内が静かになった。まるで会話の行く末を全員が聞いているような気配。

「ああ、これ?これはいま流行ってオールインワン(胸当てとズボンがつながっているもの)とはちょっと違って、簡単に脱げるのよ」

 服装について訊かれたそのひとは少しばかり戸惑っているのだろうか、声がくぐもっている。

「オールインワンって、トイレがタイヘンそうで見るたびに、どうするのか気になっちゃって」

 と、ちょうどここで一階に到着。一所(ひとところ)に押し込められていた者たちが散り散りなった。

 

 それにしても、混み合うエレベーターでの会話は一体どうしたらいいのだろうか。

 会話をする立場になるとさして周りが気にならなくなってしまう。されど、周りにいる立場になると、耳をそばだてなくとも聞こえてくる会話に、なにもこの状況で話さなくてもと思うことは少なくない、ですよね?まれに笑ってしまうような会話というのもあるけれど、これまでの経験から、わたしはエレベーターの中では静かにするに越したことはないと考えて、できるだけそうしてきたつもりです。

 それなのに、それなのに……。

 実は、前述の会話の主はわたし。

 気になっていたオールインワンを着ている知人をまえに、服のことを聞きたい気持ちが逸り(はやり)、考えなしにしゃべりはじめてしまったのだ。

 その上、あろうことかその失態に気がついたのは、彼女と別れて数メートル歩いたときだった。突然、彼女の怪訝そうな顔、くぐもった声が一気によみがえり、ハッとしたのだ。

 ああ、わたしったら満員のエレベーターでトイレのときはどうするのかなんて、なんとデリカシーの無いことを!

 数日間、閉ざされた空間での会話を思い出しては恥じ入り、ほとほと自分にがっかりしたのだった。

 

 これ、つい先日のはなし。多くの失敗からいろんなことを学んでいるつもりでいても、同じような失敗を繰り返してしまうのはなぜだろう。

 まぁ、同じような失敗に思えても、学ぶものはその度に違ったりするのだけれど。

 

 

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弁当用に重宝している2合炊きの土鍋。

今日はおにぎらずをつくりました。

おにぎらずの写真を撮っておけばよかったのですが……。

西野  そら