西野そらの日々の事ごと

「書く」ことを暮らしのなかの一つに。日々の些事をどう受け止め、考えたのか。忘れないように。

原稿は楽譜

「おすすめの絵本は?」 こう訊かれたら、まず浮かぶのは『まさかりどんが さあ たいへん』(かこさとし/小峰書店)である。 かこさとしといえば、だるまちゃんシリーズ、『カラスのパンやさん』『どろぼうがっこう』と数々の絵本があるし、どの絵本もなん…

基本のキホン

ああ、ひどいったら、ありゃしない。 なにがひどいって、このところのわたしである。 週に数日、外での仕事をはじめた今年の4月から、家の仕事の大切さに気がついていないわけではなかった。いや、気がつくというよりも、むしろ大切さを思い知らされたていた…

心に居座る岩

母と電話をしていたときだ。 「お父さんもお母さんも動物が苦手だったからね……。」 母が反省めいた言葉を口にした。 わたしのブログ、7月11日の「不条理」を読んで、娘に動物苦手意識を抱かせたのは自分たち親の影響と考えたのらしい。

ナツシグレ

ミーンミーン、ジージー、ジリジリジリリリ……。 朝からその音の波は、あたりを響もしていた。無意識に聞き取っていたその音の波が、ある瞬間に蝉のこえであったことに気がつく。常よりはげしく聞こえてくる蝉の声。 そうか、これが蝉時雨だな。 これより数日…

ものは言いよう

さして狭くもない歩道でのことだ。すれ違いざまにぶつかりそうになって、あわてて肩を後ろにひいた。 ほぼ同時に、 「ちっ、どこ見て歩いてんだよ」 と、吐き捨てるように言う、七十代ぐらいのおじいさん。 「ごめんなさい」 と、わたし。

どうにもト・マ・ラ・ナ・イ

気がつけば、8月も半ば。 肌を刺すような強い日差しの日もあったけれど、年々蒸し暑くなってきている。日陰に入ったとて、纏わりつくような湿気からは逃れられず、逃れる方法はクーラーをつけるしかない。が、クーラーをつければつけたで体が重くなる。 自然…

土産のはなし

行の土産を買ったり、もらったりする時期だからか。 「3年生の夏休み明け、マナからお土産もらったじゃない。あれには驚いたよね」 と、次女。どうやら小学三年生当時の思いがけない土産のことを思い出したようである。

蝉と雨と浴衣

目覚まし時計のアラーム音をとめたところで、蝉が鳴いた。 「ミーンミーン」だったか「ジィ〜」だったか失念してしまったが、ことし初めての蝉のこえ。 ああ、夏がきた。

「注意」

食卓にノートパソコンを置いて、これを書いている。書きものは食卓。これが常である。 いまの食卓はこんなふうだ。ノートパソコンの左側には、書きはじめる前に食べたおせんべいの袋と数冊の本が積んである。右側には家で炭酸水をつくるための専用ボトルが置…

ミライ

小学生のわたしにとって未来といえば21世紀を意味していた。当時折にふれ、大人はわたしたちに言ったのだ。 「君たちが21世紀を担っていくんだよ」 しかし。いくらそんなこと言われても、わたしには21世紀も未来もちっともピンとこなかった。

不条理

バイト先でのはなしだ。 「ミャーミャー」 窓の外から、か細い鳴き声が聞こえてくる。 子猫が捨てられていた。

撤回

もう飲まない。 なんど誓ったことだろう。いや、誓うほど切実ではないにしても、毎日は飲まないと幾度となくみずからに言い聞かせてはきた。 昨年あたりから、ワインを4、5杯飲んだ日の翌日がきつい。目覚めた途端、 「くたびれた」 となる。

顔も知らないけれど。

「その方とは、喧嘩をしたから今ではご挨拶もしませんのよ」 こう言ったのは、同じマンションの林さん。八七歳のご近所さんである。 絵が好きだという林さんは白髪のショートへア。八十代の女性にしては背が高く大柄であるが、ここ数年で少しばかり背中が丸…

そろそろ、忘れてくれやしないかな。

妹家族が引っ越す。この度の引っ越しは、リフォームのために半年間過ごした仮住まい(うちの近所)から、ピカピカに仕上がった自分たちの家へ戻るため。 引っ越し前日、家の近くで妹と出くわした。 「もう、ぐったり。まだダンボール詰が終わってないの」

常態、脱皮。

アルバイトの日。 家を出る時間は午前9時10分。それまでにすませたい家の事ごとを、手を動かしながら算段してゆく。まずは洗濯機を回してから、長女の朝ごはんからつくる。長女が食べはじめたところで、次女の弁当と、夫、次女、わたしの分の朝ごはんをつく…

親しいともだちがいない!

気になる植物というものは、そうとう移ろう。 いつかの年はハナミズキばかりが目に止まり、いつかの年はシャクナゲに吸い寄せられた。紫陽花の年もあれば、彼岸花が気になって仕方がなかった年もある。 そして今年はどうやら、ドクダミ。 5月になると、そこ…

プチメール

「疲れるので、帰って来るまでには機嫌を直してください」 気まずいまま夫を送り出した日、わたしはこんなメールを送る。 喧嘩に被る笠はなしとはよく言ったもので、その日も朝の穏やかな雰囲気が一変した のは、玄関までのたった数歩でのことだった。 「今…

本当のこと

13年前の話である。 娘が一緒に登校していたNちゃんのお母さんから電話があった。 「Nの口調がきつくて友だちと喧嘩になったり、泣かせたりするらしいの」 担任から連絡がはいったとかで、普段の子どもの姿を知りたいということだった。

自分の食い扶持ぐらい……

図書館でアルバイトをはじめてから、ひと月が過ぎた。 働きに出るのは実に26年ぶりである。 話はちょうど1年前に遡る。 40代で起業した友人と会った折。穏やかというよりは生き生きとしている友人の仕事の話を聞いているうちに、起業をした理由を訊きたくな…

小野さんに会いたい

「ああ、小野さんに会いたい」 洗い物をしながら、ひとりごちる。 「そういえば、姿勢よくなったよね」 思いがけず、後ろから夫の声。

すいません、すいません。

すまないのくだけたかたちの「すいません」は、感謝の意、謝る意、誰かに何かを訊ねるための呼びかけにも使える重宝なことばだ。 かく言うわたしも、いろいろな場面で安易に「すいません」を連発してしまう。しかしあるときから、この重宝な言葉がしっくり来…

警報音

そういえば、2011年3月の東日本大震災以前にもあったのだろうか。 テレビで流れる緊急地震速報の警報音のことである。 以前からあったのかもしれないが、警報音がなるほどの大きな地震を経験していないものだからか、わたしは東日本大震災で初めてあれを聞い…

まわる、回る。

昨年末のこと。 前夜、布団に潜り込んだときにはそれらしい気配はなかった。それらしいとは、頭痛があるとか、いつもより強い疲労感があるとかのわずかな体調の変化のことだ。 明け方ごろ、寝返りを打ったのだろう。突然ぐるぐるを遠い意識で感じる。 めまい…

7時間後

4月最初の週末。 曇天。 少しばかり肌寒くもあるが、桜をみにゆく。目当ては隣まちの桜並木。電車でゆけば家から15分足らずのところを、30分かけて歩く。

 四月一日 (しがついっぴ)

午前五時五五分。目覚まし時計がなる。 朝にはめっぽう弱く、毎朝、目覚ましのアラームの世話になる。しかもアラーム音と共に起き上がるという潔さもありゃせず、いち度目は眠さと闘う五分間のためのアラームである。

ウソからはじまった、日曜日

次女(高校一年)の学年通信を読んで吹き出した。 「勉強している人はしてないと言い、してない人はしてると言う、あるある」 この学年通信は生徒による生徒のための便りである。わたしが読んだ学年通信は、定期試験の時期に時間を取られる部活動や委員会活…

適応能力

世田谷美術館に行った帰りのこと。 午後2時過ぎだというのに、お昼をすませておらず、そうとうお腹が空いていた。 夫はスマートフォンで、蕎麦屋の検索をはじめる。美術館から歩いて十分のところに、良さそうな蕎麦屋があるらしい。

風景

吉祥寺駅前の交差点は、たいてい歩道も車道も混み合っている。夫とわたしは行き交う人の波をすり抜けながら駅近くの駐車場に向かって歩く。

冷凍しないわたし

その日は茄子、蕪、人参、だった。 いつもゆく八百屋の自家製糠床に漬かっている野菜の話だ。 糠床はクリーム色をしたプラスチック製の漬物容器におさまり、店先の簡易レジの前に置いてある。つまりレジに並ぶや糠味噌をまとった野菜たちが、目の端にはいる…

オプチミスト

買い物からの帰り。 マンションの集合ポストの前でお巡りさんと鉢合わせする。日頃マンション内では見かけぬその姿。なになに?少しばかりの好奇心と少しばかりの不安と少しばかりの驚きで半歩後退さる。